こんにちは!
今回はフロントローディングの重要性について記事を作成しました。
フロントローディング?何それ?って方も多いのではないでしょうか。
僕も製品設計で実際にフロントローディング開発を経験していなかったら知らなかったと思います。本記事はその経験をもとにしています。
この記事はこんな疑問にお答えします。
- フロントローディングって何?
- フロントローディング開発って何がいいの?
- どんなところで使われているの?
結論から言うとフロントローディングとは基本設計段階などの設計の初期段階で可能な限り問題を洗い出し対策することで試作費用や検証時間を減らそうという取り組みです。メーカーの製品開発は使われる手法になります。ただし取り組むには体力のある企業じゃないと難しいのではないかと思います。
僕は転職時の面接でフロントローディング経験を結構アピールしていました笑
では詳しくみていきましょう!
フロントローディングとは
フロントローディングとは簡単にいうと基本設計段階などの設計の初期段階で可能な限り問題を洗い出し対策することで試作費用や検証時間を減らす取り組みです。
例えば最終試作の評価中に不具合が見つかった場合、金型部品だと金型改造の費用や期間が必要になります。CADデータの修正も必要ですし、見積もりや業者とのやり取りも発生します。最終試作などは時間に余裕がないことが多いのでこの段階での不具合修正は納期に致命的な影響を与えてしまいます。
納期にも余裕がなくなり開発者や営業、調達部門などの各部署に少なくない影響を与えます。
経験した僕としてはリリース前に不具合が出ると残業必須となり肉体的にも精神的にも結構しんどかったです。
このようなことが起こらないように基本設計段階で3DCADを使用して関係各所でDR(デザインレビュー)を実施したり、解析(CAE)で強度や熱の評価をし対策をしたりします。
初期の修正がしやすいうちに問題をつぶせるだけつぶします。
フロントローディングのメリット
フロントローディングのメリットは納期の短縮と試作費用の削減が可能なことです。
それだけではなくDRでは設計部署だけではなく、工場部門、メンテナンス部門、営業部門、品証部門などのたくさんの部署の有識者を集めて議論するのでコミュニケーションが活発になるという副次的な効果もあります。部門同士の仲が悪くなることも多々あります笑
初期段階で3DCADのデータを使うことで製品に対して共通のイメージができます。モノができてから後出しでデザインや組み立て方などにダメ出しを食らう確率がぐんと減ります。
リリース前に不具合が見つかった場合、納期の都合で本質的な解決方法ではなく、一時的な応急対策のような対応を取らざるを得ないようなこともよくあります。前段階で問題点をつぶすことで付焼刃的な対応が減って製品の質も上がります。
もちろん初期段階での変更のほうが量産前や試作時に問題が出るより印象が良いですし何より簡単です。
フロントローディングのデメリット
フロントローディングのデメリットとしては設計の初期段階がとても忙しくなることがあげられます。フロントローディングをしても結局最終試作で不具合が多発するようでは意味がありません。どうならないように初期段階の開発は細かいところまで深く検証します。
しかしながら当然初期段階では製品も試作品もありません。人間のイメージだけでは限界があるのでこの時に活躍するのがCADとCAEです。CADについて知りたい方はこちらの記事を参考にどうぞ!
ただ、このCADやCAEのソフトがかなり高額になりますし、すぐに使いこなせるようなものでもありません。高額な導入費用や研修工数はデメリットになります。
また、誰でも使いこなせるようなものではありません。特にCAEを使いこなすにはは4力学や有限要素法などの高度な専門知識が必要です。
しかし、これからはCADやCAEを使って設計するのが当たり前の世の中になっていくはずです。早めに使いこなせるようになっておきたいところです。
フロントローディングの事例
ではここで私がある製品の筐体を設計するときに実際にしていた事例を簡単にですがご紹介します。
まず決定した仕様で開発部門内で簡易的にポンチ絵を作成します。ポンチ絵を製品デザイン部門に提出し外観デザインを作成してもらいます。
そして類似製品の過去の不具合や設計チェックリストなどを元にしながらモデリングしていきます。外観デザインや内部の基板やコネクタの配置をざっくりと3DCADでモデリングします。この段階で部品配置やネジ止めの位置等に問題があれば電気設計者やデザイナーと3Dデータを見ながら打ち合わせを行います。
構造が決まったら必要に合わせて強度解析や熱解析、構造解析などを実施します。ここでは過去の類似機種をベンチマークにし相対比較することが多かったです。
ここまで出来たら3Dデータを使って関連部門でDRを実施します。3Dプリンタで作成して実際に見ながら話をするようなこともありました。
3Dプリンタの活用についてはこちらの記事を参考にどうぞ!
DRと言っても様々なDRがあります。強度などの機械要素をレビューするものや組み立て方をレビューするもの、配線やEMCなどの電気的な観点からレビューするものなどたくさんあります。正直かなり面倒だし、しんどいです。
物がない初期工程では検証して大丈夫でしたということができません。指摘に対する回答には理論だった説明が必須です。なんとなくは通用しません。何度も洗礼を浴びました。。。
品質にこだわりのある企業ほどこのようなDRが何の指摘もなく(穏便に)終わるということはほとんどありません。保守がやりにくいので変えてほしいとか、営業要望でこの部品だけ交換できるようにしてほしいとか。中には重箱の隅をつついたような細かい指摘もあります。
数々の指摘を反映して再度DRに臨みます。ここでOKがもらえたら一段落です。
従来の流れですとまず一次試作を製作して検証し問題なければ、二次試作(最終試作)で金型などの大物固定資産を発注となるところです。
私のしていたフロントローディング開発ではこの一次試作がなく、いきなり本型製作に入り最終試作検証となります。一次試作費と一次試作検証期間がまるまるなくなるわけです。
そして不具合がなければそのまま量産へ、不具合があっても初期工程でつぶしこんでる分だいたいは大きな不具合にはなりません。不具合修正も一次試作の製作と検証を考慮するとだいぶ安く早く済みます。
いや、すばらしい取り組みですね。
ただ、やっている本人(開発者)として言わせてもらうとめちゃめちゃしんどいし、検証試験はめちゃめちゃ緊張します。正直お願いだから一次試作を作らせてくださいって感じです笑
おかげさまでエンジニアとしては成長した気はします。。。
まとめ
フロントローディングとは基本設計段階などの設計の初期段階で可能な限り問題を洗い出し対策することで試作費用や検証時間を減らそうという取り組みです。
メーカーの製品開発は使われる手法になります。
ただし取り組むには体力のある企業じゃないと難しいのではないかと思います。
機会があればぜひお試しあれ!エンジニアとしては確実に力が付きます!