今回は空圧シリンダーの基礎について記事を作成しました。
この記事はエアシリンダーを使ったことのないエンジニアに向けた入門記事です。
具体的に計算したり、選定したりする前に必要な知識を補完したり、全体像を掴むための記事になります。
僕は転職して現職に就くまでエアシリンダのような駆動機器を使ったことがありませんでした。
イメージも湧かない部分が多く、選定や設計に困っていたときの経験を元にしています。
選定などのエアシリンダーについての記事はすでにたくさんありますし、メーカーからも選定ツールや資料があるのでそちらを参考にされると良いと思います。必要あればそのうち追加していきます。
この記事ではこんな疑問を解決します。
- エアシリンダーって何?
- エアシリンダーがどんな風に使われているのか知りたい
- エアシリンダーの周辺部品を含めた構成が知りたい
では詳しくみていきましょう!
エアシリンダーとは
エアシリンダーとは空気圧(圧縮エア)でシリンダーを直動運動をさせる機器です。
金属の棒を空気の力で出し入れする構造になっています。
有名なメーカーだとSMCさんやCKDさんなどがあります。
SMC エアシリンダ 基本形 CJ2B16-50Z
動かすことのできる荷重は使用する「エア圧」と「シリンダー径」で決まります。
エア圧が高くなるほど、シリンダー径が大きくなるほど大きな力になります。
設備によりますが、エアシリンダーではエア圧は0.5MPa前後で使用することが多いです。
工場などでは設備の都合でエア圧が0.4MPaまでしか上がらないなんてこともあるので、必ず導入場所のエア圧を確認しましょう。
大きな力を生み出そうとするとエア圧を上げるよりシリンダの径を大きなものを選定するのが現実的になります。
メーカーや型式によりますが、ストロークは1200mmぐらいまではあったような気がします。
カスタム制作でさらに長いものも製作可能なはずです。
ボールねじやベルトプーリーとは異なり、シリンダのロッド(棒の部分)を1m伸ばした時は元々のシリンダの長さもあって2m以上になるのでスペースも取ります。
単動タイプと複動タイプがあり複動タイプは押し出しも引き込みもエアで行います。
単動タイプは一方向のみエアで行い、元の位置にはバネで戻します。
複動タイプの方が単動タイプよりもラインナップが多い傾向があります。
エアシリンダーは電動シリンダーにくらべて安価ですし、エアを供給すれば使えるので電気工事のようなものも必要ありません。
モータがない分、電動シリンダよりコンパクトですし、構造がシンプルなので制御も単純になります。
ただし電動シリンダーのように正確な位置調整はできません。
種類も豊富で高荷重タイプや薄型、クリーンルーム用などがあります。
エアシリンダがよく使われているのは昇降機構やワークの位置決め、プレス機構などです。
また昇降など上下する機器で使用するために、落下防止のメカロック機構のついたシリンダーなどもあります。
身近なところだとバスや電車など扉の開閉機構に使われています。
作動時にプシューと音がするのが特徴です。
音はそこそこ大きいので気になるかもしれません。
シンプルな機構で昔からある機器なのでネット上でもノウハウや利用方法などの情報が多く出回っています。
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エアシリンダーを使うための基本構成
エアシリンダーは圧縮エアで動くのですが、電動シリンダーが電気があれば動くのとは異なり、空気だけでエアシリンダーを動かすことはできません。
多くの周辺部品が必要になるのです。
代表的な周辺部品はこんなものがあります。
- 継手
- チューブ
- 電磁弁
- レギュレータ
- スピコン
- サプレッサー
他にも先ほど説明したプシューという音を小さくするための部品が消音用のサプレッサーです。
これだけでも部品の種類が多く感じますが、その部品の中にも用途やサイズによって様々な種類があります。
継手に関してはネジの規格も複数種類あるので非常に数が多いです。
また、オートスイッチなどのシリンダの位置を検出するセンサーの信号をPLCに出力し、電磁弁を制御します。
空気なのでイメージしにくいですが、レギュレータやスピコンには向きがあるので接続時には気を付けましょう。
必要な部品の種類や数、制御のタイミングは使用するエアシリンダーによって変わりますのでメーカーの構成図や空圧回路を確認しましょう。
慣れていない方はメーカーの相談窓口や営業担当に相談すると適切な部材を選定してくれます。
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エアシリンダーの使い方
シリンダーの先端はおネジタイプとめネジタイプがあり、押しつけ治具をつけたり、昇降させる台と連結したりします。
横荷重を与えにくいようにピン連結できるアタッチメントもあるので検討してみてください。
シリンダーの固定方法も本体をネジで固定したりブラケットを使用したりクレビス金具を使用したりと用途に合わせて色々あります。
シリンダーはモーメントや横荷重には弱いので、重心の位置がシリンダーの軸から外れる場合はリニアガイドなどで荷重を受ける構造にしましょう。
リニアシャフトやリニアブッシュと組み合わせて使います。
SMCさんのエアシリンダーだと垂直使用時の可搬力は水平使用時の0.5倍程度と基本的に考えるようです。
他にも昇降する物が振動しているなど特殊な条件があればそれによって安全率を調整してもいいと思います。
シリンダーにスピコンを装着し、チューブと電磁弁を接続し大元からエアを供給すれば、手動でも操作できます。
PLCやロボットなどの上位から電磁弁を制御することもできます。
停止位置はシリンダの側面に取り付けたオートスイッチ(センサー)で決めます。
位置に精度が必要ないのであれば電磁弁への出力信号をタイマーで指定しても位置決めできます。
エアシリンダーは電動シリンダのような微調整は苦手です。
現場の努力によっては微調整も可能ですが、そもそも電動シリンダを使った方が安定します。
エアシリンダーを使う場合はセットカラーなども組み合わせて位置は調整しましょう。
エアシリンダーはメカ機構で成り立つ機器なので定期的にメンテナンスは必要です。
例えばロック機構はメカ的にでロックしているので摩耗したりします。
長年使っていると1日放置していると少しずつ下がって来たりします。
チューブも割れてしまうことがあります。
空圧を使った装置をもっと学びたいのであればSMCさんの空圧セミナーをお勧めします。
最近ではコロナの影響でオンラインで開催されているので参加しやすくなっています。公式HPから予約可能です。
ただ、参加しやすい分すぐに日程が埋まってしまうので早めに申し込みましょう。
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まとめ
エアシリンダーとは空気圧(圧縮エア)でシリンダーを直動運動をさせる機器です。
昇降機構やワークの位置決め、プレス機構などに使われています。
身近なところだとバスや電車など扉の開閉機構にも使われています。
エアシリンダーを動かすためには継手、チューブ、電磁弁、レギュレーター、スピコン、コンプレッサーになど様々な部品が必要です。
他にも消音用のサプレッサーや位置調整用のセットカラーなどもあります。
エアシリンダーを使用した設計はかなり学べることが多いのでぜひ使用してみてください!
何より動きのある装置の設計は面白いですよ!!