今回はロボットハンドの設計時に気をつけるポイントについて記事を作成しました!
僕は機械系エンジニアとしてロボットシステムの設計をしています。
自社の製品に合わせてハンドを開発することもあり、実際に経験した内容をこの記事には盛り込んでいます。
産業ロボットを購入してもロボットは半完成品なので、システムとして動かすためには色々な周辺部品を用意しなくてはなりません。
ロボットハンドも用意しなければいけない部品の1つです。
ロボットハンドも市販のメーカー品をそのまま使用できればいいのですが、場合によっては自分で設計したり、メーカーのハンドを複数個組み合わせたりしてオリジナルのロボットハンドを制作しなければならないこともあります。
ロボットに比べるとロボットハンドは地味に見えますが、ロボットハンドの設計は以下のことを考えながら設計するので、設計力がつきます。
- どんな機能を持たせるか
- 購入できる部品はないか
- 強度は十分か
- 許容モーメント以下か
- 動作時の取り回しは可能か
では、詳しく見ていきましょう!

どんな機能を持たせるか

まずはどんな機能が必要か考えます。
ロボットは何らかの自動システムの一部のはずなので、機器仕様や要求仕様書から装置全体に必要な機能を大まかに把握しましょう。
その機能の中からセンサーなどを使ってハンドに盛り込むことができそうな機能をピックアップします。
例えばこんな感じです。
- ワークを吸着する → 吸着パッド
- ワークをピックする → グリッパー
- ワークの位置を特定する → ビジョンセンサ
- ワークの重量を測定する → 質量計
- ワークとの接触を検知する → 力覚センサ、リミットスイッチ
こういった機能の中でどの機能をハンドに持たせてどの機能をハンド以外の部分で処理するかを決めましょう。
全てをロボットハンドで解決しようとする必要はありません。
例えば、重量測定の機能は電子重量計などにロボットで置いて測定するようなこともできます。
ちなみに僕は上記の機能すべて満たすハンドを設計したことがありますが、機能を盛り込めば盛り込むほど重くなるし配線も多くなるので取り回しに苦労しました。
販売している製品はないか

ハンドに必要な機能が明確になったら部品の選定です。
センサーなどは購入することが多いと思いますが、把持などの機構部品は設計したりする場合もあります。
全てを設計するのは手間もかかりますし、リンク機構やスライドなどの駆動機構がついたようなハンドだと寿命などの検証も大変です。
そこで購入できる部品は購入してしまおうというのが僕の考えです。
ロボットハンドをカスタムで設計している時点で自社での量産効果なんてものはないと思います。
会社や部署のルールなんかもあると思いますが、コストと納期、品質の観点から既製品を購入したほうが良いと思います。
最近はハンドのバリエーションも増えていますのでそれがそのまま使えたらとても楽になります。
上手く購入品がそのまま使えることもまれなんですが。
日本メーカーの部品は高品質なものばかりなので遠慮なく頼りにさせてもらっています。
強度や把持力は十分か

強度はハンドにかかわらず機械設計の全てで言えることですね。
センサーなどの部材の種類が明確になるので、どこに何を取り付けるか配置を考えたり、どのように固定するか考えたりできます。
この段階でハンドのおおよその重量を計算しておきましょう。
そして搬送系の場合、対象となるワークの重さを考慮してもハンドが壊れたり、たわみが性能に影響しないか確認します。
ロボットハンドは「片持ち梁」のような構造をしている場合が多いので、搬送物が重量物の場合は重心の位置に気を付けましょう。
把持機構などの場合は、グリップの先端だけでなく取り付け部分の強度も確認が必要です。
ワークを把持したときにたわんでしまってオンハンドカメラの撮像位置がずれてしまうなんて言うこともありました。
把持力は想定するワークの重量だけではなく、材質や形状も考慮に入れて決定しましょう。
僕は仕様変更に備えてオーバースペック気味に選定します。
許容モーメント以下か

強度の面で苦労するのは可搬重量よりもモーメントであることが多いです。
可搬重量を満たしていてもモーメントがNGとなることはよくあります。
ハンドとワークを合わせたときの重心の位置はできるだけ早めに確認しておきたいところです。
おおよその重心の位置は3DCADですぐに確認できます。
ロボットのフランジ中心軸に重心を持ってくるような設計ができればよいのですが、できるのはよっぽどシンプルなハンドの時ぐらいですね。
モーメントを計算して許容モーメントと安全率の観点から使用できるか検討しましょう。
力覚センサやロボットの許容モーメントは仕様書でしっかり確認をしておきましょう!
動作の時の取り回し

設計時に見落としがちなのが動作時の取り回しです。
ハンドの設計者とロボットのプログラム作成者や現場でティーチングする人が異なるような場合は設計段階である程度モーションを決めてしまいましょう。
機能を盛り込んだハンドを使用する場合はロボットの動きも複雑になることが多々あります。
ロボットのフランジ座標を回転させたり、ワークによってアプローチの仕方が変わったりする場合、要注意です。
ロボットのプログラム中にヒヤッとすることが多々あります。
特にセンサー類のケーブルや空気チューブは見落としがちです。
どの経路で這わせるのかも含めて考えておきましょう!
まとめ
ロボットハンドを設計する時のポイントは以下の5つになります。
- どんな機能を持たせるか
- 購入できる部品はないか
- 強度は十分か
- 重量は許容範囲内か
- 動作時の取り回しは可能か
ロボットハンドの設計にはこのように検討すべきことが盛りだくさんなので、見た目以上に設計力がつきます。
購入品のハンドが使用できればそれに越したことはありませんが、ぜひ機会があれば設計に挑戦してみてください!
